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ANAの背面飛行をSIMで再現してみた

2012年3月20日 >

(※2012年にこの記事を投稿しましたが、2020/4/21に内容を大幅に更新しました)

2011年に起きたB737-700型機の背面飛行(ANA140便)

自社のSIMを使って再現してみました。

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ANA便が背面飛行に至るまでの経緯

経緯については色んな記事で説明されているのでここでは割愛します。可能なら正式な報告書をご覧になるのが一番いいと思います。オススメの記事

また、背面飛行とはどういう状態かという具体的な定義がありませんし(アクロバットの世界にはあるのかも)、報告書でもそのような言葉は使われていませんが、本投稿では便宜上そのように表現します。

 

プロのパイロットがスイッチの誤操作?

調査報告書では誤操作の理由を以下のように説明しています。

①スイッチが似ている

②副操縦士に737-500の経験があった

 

②について少し説明します。

737-700のラダートリムSWは、737-500のドアロックセレクターがあった場所付近に設置してあるんです。

この配置が原因で、副操縦士はドアロックセレクターを操作すべきところを誤ってラダートリムSWを操作してしまい、その後の不適切な回復操作により機を以上姿勢に陥れてしまいました。

 

そんなことあり得るの?

うーん、あると思います。実はB747-400から777に移行した際、このインシデントをハッと思い出す出来事が1度だけあったんです。

B747にはオートブレーキセレクターが写真の位置にあります。

一方、777では以下の位置にあるんです。

僕が操縦担当だったある日、777に乗っているのにもかかわらず、747のおオートブレーキセレクターの位置に手がスッと伸びたんですよね。その時は無意識に手が動いてしまっていました。

747と777でこれだけ位置が離れているのに、ふと昔の記憶が手に帰ってくるようなことがあるんだな...と思いました。

 

SIMで再現した感想

4人のパイロットで実験したのですが、「よく回復できたなぁ」というのが正直なところでした。

 

  • 当然スタートルエフェクトがあった
  • 外が見えない夜であった
  • 1人だった

 

上記を鑑みると、131.7度のバンク且つ35度下げピッチという状態からよくぞ持ちこたえたな、と。それだけ、90度を超えるバンク角は計器で見ると異常でした。

私が目をつぶっている間に教官がバンクを90度以上、ピッチを約30度下げ状態にしたところで目を開けて姿勢を回復させたのですが、一瞬どっちにバンクが入っているのかわかりませんでした。

もちろん初期の段階で正しい回復操作をしていればあんな酷い状態にはならなかったわけで、そこは非を認めざるをえません。しかし、みるみる状況が悪化する中で、スティックシェーカー(失速警報)や速度超過警報は確実に副操縦士の冷静さを削いだはず。

その中で、最終的に姿勢を回復できたことや他機と衝突しなかったことは、まさに不幸中の幸いだったと思います。

 

スタートルエフェクトって?

報告書では「驚きと混乱」と表現されていますが、ようはビックリすることです。

ビックリしたとき、人間は生理的にちゃんとした行動が取れないんです。最近のCRMの授業ではスタートルエフェクトから如何に回復するかという内容が取り上げられているはずです。

 

エアフランス447便の例

あの事故の右席にいた副操縦士は、左席のパイロットに操縦を引き継いだ後も、操縦桿(サイドスティック)を引き続けていました。報告書には、副操縦士は自身が何をやっているのか認識していなかった可能性があると書かれており、これはスタートルエフェクトから回復出来なかった典型的な例だと思います。

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ANA便背面飛行に関する記事

本件に関しては色々な記事が上がっていたのでいくつか読んで見ましたが、Aviation Wireさんの記事がしっかりしているように思いました。

センセーショナルな言葉で煽るような表現がなく、事故報告書に基づいて淡々と纏めてあるなと感じました。

 

一方で気になる記事もありました

例えば「殆ど空中分解寸前だった」という表現をしている記事。なるほと、空中分解の可能性はゼロではなかったかもしれません。

ただ、空中分解事故として有名なBOAC911便墜落事故では、機体に7.5Gもの強烈な負荷がかかったと言われています。確かにANA140便でも制限値の2.5Gを超える2.68Gがかかっていますし、制限速度(M.82)を超えるM.828を記録してします。しかし「空中分解寸前」という表現は流石にアレな気がします。参考記事

アイキャッチーなタイトルが必要なのは理解出来ますが...

 

コックピットのドアは外から開けられなかった?

また、こんな指摘をされている航空評論家の方もいらっしゃいました。

 

テロ対策で外から入れなくなっているが、パイロットがカギを持つ必要がるのでは。もし中のパイロットが急病になったら誰も入れない。

 

これは間違いです。

外から開ける方法はあります。実際、報告書にも「機長は、副操縦士がインキャパシテーションになっているのかもと思い、自ら操縦室入口のドアを開けることにした」と書かれています。

ただジャーマンウィングス9525便墜落事故の場合、操縦室内にいた副操縦士が故意に機長の入室を妨害したと考えられているため、こういう場合はまた別の話です。

※インキャパティシテーションとは操縦士が体調不良なとで操縦できない状態になることです。

 

けっこう驚いたこと

けっこう驚いたことは、グーグルで「ANA 背面飛行」を検索しようとすると「背面飛行 副操縦士 処分 名前」みたいなキーワードが提案されたことです(笑)


処分がどうなったか憶測を展開する記事も沢山ありました。

皆さんそんなに気になります?

処分が甘かったら、もうANAには乗らないおつもりだったのかしら...

 

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