「航大と自社の違い」の続き。
その日を堺に、会期の雰囲気は少し変わります。入学以来、同期一丸となり幾多の試練を乗り越え、文字通り同じ釜の飯を食って戦ってきた同期の中に、未就職者という、敢えて表現すれば「敗者」が生まれてしまう。それはもう、本人にとっても会期にとっても、とてもとても辛いこと。
当時、卒業前に全員の就職が決まることは大変稀で、そういう辛い瞬間が自分たちにもやってくるであろう事は分かってました。しかしいざ直面してみると、やっぱり辛い。
食堂でソイツが飯食ってるとつい入るのを躊躇ってしまったり、風呂場でソイツに会うとなんだかぎこちなくなってしまう。
それでも、最後の目標である卒業に向けて歩みを止めるわけにはいきません。一緒に飛ぶ班員の中に未就職者が出てしまっても訓練は容赦無く続きます。部屋の相方が未就職になってしまっても寮生活は淡々と続きます。
僕の会期でも数人の未就職者がでました。航大の寮は基本2人部屋ですが、ある部屋で2人とも未就職に。その部屋は僕の部屋から近かったのでよく出入りしていましたが、就職発表を境に当然行きづらくなります。しかし、全く行かなくなるのもアレなので
「あら、この部屋なんか暗くね?あ、オマイラ2人とも未就だからか!」
とビール片手にイジりに行ったもんです。今思えば、そっとしといてやりゃ良かったかなと。
会期にとっては、それまでの団結がホンモノであったかを試される時かもしれません。未就職者にとっては、折れそうな心を奮い立たさて訓練に臨まなければならないわけで、その人の真価が問われる時と言えるのかもしれません。
中には結構仲悪い会期があったりするんですが、この時期に関係がギクシャクしてしまい、そのまま卒業を迎えてしまうようなこともあるのかもしれませんね。
とまぁ、少し冗長にはなりましたが、航空大学ならではの就職にまつわる人間ドラマのお話でした。
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