先日、中国のパイロットの年収に関する記事を書いたところ、こんな質問をいただきました。
手取り3800万、、、度肝を抜かれました(゚Д゚;)
単純な好奇心なのですが、フライトタイムなど募集要件を満たしたPIC経験者が多くアプライする中で、どんな方が実際に選考突破して入社されてるんでしょうか?例えば技倆、人間性、身体等ポイントがあれば教えてください(差し支えなければで結構です)— -✈︎--バナナエア-元BCG/IBM---- (@banana_air3) May 10, 2020
僕は採用側にまわったことがありませんので、ソチラの目線からはお答えできませんが、一応外資大手2社で勤めた経験がありますので、僕なりの目線でちょっと考えてみたいと思います。
採用担当者に聞いた【海外でパイロットになるには】
僕なり目線とか言っときながら恐縮なんですが、やはり餅は餅屋ということで、採用を担当したことがあるアメリカ人の元パイロット、ジョンさんに聞いてみたところこんな返答が返ってきました。
ジョンが面接で見てるコト
- どのくらい準備してきているか
- いっしょに飛びたいと思えるか(ユーモアがあるか)
1. やっぱ準備が一番大事
いくつか例をあげてみましょう。
典型的な質問に答えられるか
ジョン曰く、パイロットの面接で訊かれるコトなんてほぼ決まってるんだそうです。
なるほど、ネットで検索すると英語の質問集はいくらでも出てきます。
そういった質問は、最低限の準備をしてきているかどうかを見るためにするのであって、べつに誰もが驚く名回答を期待しているワケではないとのこと。
その会社独自の質問も当然ある
会社によっては、突拍子もない質問をしてくることもあるでしょう。
たとえば以前投稿したコレなんていかにも中東的な質問です。
でも、これだって事前に知っていれば準備することができます。
ではどうやって質問を入手し準備するのかというと、中の人に聞くわけです。
そう、つまりコネ。
僕の場合、運よく中東にも台湾にも友人がいたので、このあたりはけっこう綿密に準備することができました。
そう言うと、なんだお前は友達がいたんだから運がいいだけじゃないかと思われるかもしれません。
ハイ、確かに僕は運がよかっただけです。
でも、海外ではコネ作りだって立派な準備なんです。
例えばアメリカの大学生は、大企業と太いパイプを持ってる教授にゴマすりまくってコネ作りにいそしみます。
それは大事な就活の一環であって、そういう努力なしに「コネなしで正々堂々!」とか言ってるとマジで頓死してしまうんですね。
アメリカほどかどうかわかりませんが、アジアや中東でもそういう側面はあるはず。
少なくとも、日本のようにコネ入社を蔑視するような風潮はないのではないでしょうか。
突拍子もない独自の質問にスマートに回答した受験者を面接官はどんな目で見るでしょう。
コイツさては内部に知り合いがいるな、ズルイ奴!
と思うでしょうか。
いいえ、きっと
あぁ、しっかりコネ作りや情報収集もしてきたんだな、ホントにウチに来たいんだな
って思ってくれるはずです。
SIM試験の科目は事前に教えてくれる
面接を突破した人のみSIM試験に進めるわけですが、この試験の内容は事前に周知されることが多いです。
つまり、100%準備してのぞめるわけです。
以前ツイッター上でこんなやりとりがありました。
エアバスPの方、お忙しいところ大変恐縮ですが、私の質問にお答えいただければ幸甚に存じます、、、
No AP, A/THR, FDのRaw data ILSを行う場合、Approach speedをselectして一定の速度で飛ばすのか、若しくはmanage speedでground speed miniが働いているmagenta target speedを追うのでしょうか。— Уυhei (@heiyuhei) October 21, 2019
Yuhei氏は、当時エアバスの経験がありませんでした。しかし、試験はエアバスのSIMを使って行われるので、ツイッターのエアバス界隈に色々と質問していたわけです
おそらく殆どの受験者がこういった準備をするでしょうから、受験者全体のパフォーマンスはそれなりに高いはずです。
でも中にはいるんです。
おれエアバスの経験ないんだからできなくて当たり前でしょ?そんなことよりオレの内に秘めた操縦センスを見てよ!
みたいな人が。
受験科目を最初から教えてくれる試験というのは、こういうAng Pong Tangを確実に排除する狙いも実はあるのではないかなと想像しています。
もちろん、付け焼刃の準備では身につかない技倆や適性も見られてはいるとは思いますが。
ちょっと僕の体験談
僕がカタールを受けた時も、SIMの科目は事前通知されました。
しかし、どのSIMを使うかはその時の空き状況によると書かれていました。
ですから、当時カタール航空が保有していたB787、B777、A330そしてA320全ての飛行機に対応できるよう準備していきました。
最終SIM試験に進んだのは僕を含め4~5人だったと記憶していますが、その全員が同じような準備をしていました。(まぁ、当たり前の話ですが...)
パイロットの仕事は8割が準備
パイロットの仕事は8割が地上での準備で終わるといっても過言ではありません。
前日にお天気等の情報をすべてチェックし翌日のフライトは鼻歌交じりにこなせるようでなければならないわけです。
そんな準備が大事なお仕事ですから、採用過程でも経験あるプロのパイロットとしてどのくらい綿密な準備ができる人なのかが見られるのは当然と言っていいと思います。
ちょっと話がズレますが、以前質問箱でこんなことをきかれました。
質問です
航空大学の面接で茶髪はダメですか?なぜダメなんですか?
普通に考えてみてください。
茶髪の人と地毛の人、航空大学に受かる可能性高いのはどっちですか?
もう一度くりかえすと、パイロットの仕事は8割が準備なんです。準備の質が高ければ高いほど、フライトの質も高くなります。
人生を左右する大一番で黒染めするという最低限の準備が出来ない方を、航空大学校の面接官が採用したいと思うでしょうか。
2.一緒に飛びたいと思えるか【ユーモアがあるか】
これは日本人の苦手とするところではないでしょうか笑。
しかも英語でユーモアとか (`・ω・´)
正直、僕も自信ないのでココを多く語ることはできません。
しかし、大手の航空会社は大型機で長距離を運航していますので、この人と一緒に何時間もフライトして楽しいかな?という視点でみられるのは、当然といえば当然です。
僕が面接で気を付けていることは、ハツラツとした態度、口角あげる、たまに笑顔を見せるくらいですかね。
少なくとも暗い奴だなとは思われていないはずです。暗い奴と15時間フライトとか、誰だって嫌しょうから。
あ、もちろんチャンスがあれば一発ユーモアかましてやろうとは思ってはいます。でもかませたことは無いですね。
まとめ【海外大手でパイロットになるには】
いやぁ、ユーモアに関してあまりにも語れない自分に多少ウケてますが、まとめに入ります。
試験はミズモノですから運に左右される面も当然あります。
緊張していつもはやらないミスをしてしまったり、自分以外の受験者がみんな天才だったり、いろんなことが起こります。
でもそういうコトはOut of your hands!
ですから、できる準備をとことんやって、後はまな板の上の鯉に添い寝でもしてればいいのではないでしょうか。
そう、あれですよ!
人事を尽くして天命を待て!
多分人生と一緒ですね。
外資大手に入るというコトは、これまでの人生をそういうふうに生きてきた方にとってはケッコーなんでもないことなのかもしれません。僕は必死でしたが。
パイロットになりたい方向けの記事をコチラにまとめました。
パイロットとして海外転職を目指す方向けの記事をコチラにまとめました。
おことわり
- 上記は既に経験のあるパイロットが海外に転職するという前提のお話です。
- ジョンは仮名です。
✈