ANAとJALが統合するのではという記事を目にしました。
まぁ、ハッキリ言ってどのくらいの現実味があるのかなんて小生には皆目見当もつきません。
しかし、ひとつだけ自信を持って言えることがあります。
JALとANAが統合してもパイロットは仲良くできない
コレはですね、もう死ぬほど自信があります。彼らが仲良く手を取りあい協力して空を飛ぶなんて、エベレストの頂上でマンゴー栽培するより無理ゲーです。
理由は以下の2つです。
- JAL・ANAには他所からパイロットを受け入れる文化がない
- JAL・ANAのパイロットは自分たちが世界一優秀だと思っている(誇り高い)
1. JAL・ANAには他所からパイロットを受け入れる文化がない
なぜ他社からパイロットを受け入れる文化が醸成されないのでしょうか。
それは両社の採用方法に起因しています。
JAL・ANAにパイロットとして入るには自社養成と航空大学から入るしかありません(私大は両社の文化醸成に関わっていない新しい存在ですのでココではあえて外しています)。
自社養成に合格する可能性は約1%、航空大学から2社に入れるのはほんの一握りです。
つまり、彼らは選ばれた存在なのであり、彼らの生きる世界は非常に排他的であるわけです。
そこには、ヨソモノを受け入れるような寛容さは存在しません。
JALとJASがくっついたとき、当然軋轢がありました。ANKがANAに吸収されたとき、当然軋轢がありました。
我々ANAのパイロットは大型機で国際線を飛ぶことに誇りを持っている。今更ANKと一緒にされるわけにはいかない。
誇張でもなんでのもなく、そういう意見はANAの中に根強くありましたし、いまでも旧ANKの人は肩身の狭い想いをしています。それを嫌って会社を去った旧ANKのパイロットは沢山います。
しかし、僕個人としては、ANAやJALのパイロットを責める気にはなれません。
なぜなら、ああいった採用方法を採っている限り、いわゆるエリート意識が植え付けられることは至極当然のことだと思うからです。
では、海外に目を向けてみましょう。
例えばアメリカ。
ヒコーキの国アメリカでは自社養成でいきなりデルタに入るとか、航空大学を出ていきなりフェデックスに入るなんてことはありえません。
皆、空軍で経験を積んだり、軽飛行機からキャリアを始めて何度も転職を繰り返しやっとの想いで辿り着くのが、レガシーでありメジャーなんです。
ですから、B777の右席に辿り着いたときには40歳過ぎてたなんて当たり前。50歳の新人副操縦士ですら決して珍しくありません。
従って、他社からのパイロットを受け入れたくないという雰囲気は醸成されにくいワケです。
むしろコックピットで、
オマエはどんなキャリアを歩んできたんだ?
お、その飛行機は俺も乗ったぜ!
あ、その会社俺の友達いるけど知ってる?
ってな話に花咲かせて互いのキャリアをリスペクトしながら飛行機を飛ばします。
まぁ、会社によっては軍出身者が幅利かせてるような場合もあるでしょうが。
2. JAL・ANAのパイロットは自分たちが世界一優秀だと思っている
はじめに断っておくと、自分たちが世界一だと思うことは悪いことではありません。
逆に、そう信じて仕事に臨めるということは素晴らしいことだと思いますし、実際あれだけ高いレベルで均質化されたパイロット集団を作り上げることは並大抵のことではないと思います。
しかし、統合となると話がややこしい。
両者が自分たちのオペレーションに誇りを持っているだけに非常に非常にややこしいワケです。
例えばスタンダードコールアウト。
ある会社では5,000ftでレベルオフする1,000ft前にOne thousand feet to 5,000 feetとコールすることになっています。しかし一方ではThousand to go というふうにコールする会社もあるわけで、統合する際はどちらかのコールアウトに統一する必要があります。(或いは新しいコールを採用する?)
この統一する作業をANAとJALの間で進めることは非常に困難です。
何故なら、両社のパイロットが
ん?世界一である我々がなぜ他所のプロシジャに合わせなきゃいけないの?
って言うに決まってるから。
そんなもん、上層部での話し合いがまともに進むワケありません。
同じ飛行機であれば会社が違っていても飛ばし方は大筋で一緒ですが、細かいところでは会社によってたくさん違いがあるんです。
膨大なマニュアルに散らばる細かい差異を全てどちらかに統一するなんて作業が、ANAとJALの間でうまくいくとは到底思えません!
新しいマニュアル完成するのにマジで3年くらいかかりそうw
JALのパイロットにANAのプロシジャをヤレなんて、誇り高きサイヤ人の王子であるベジータ様に明日からかめはめ波打てって言ってるようなもん。
折り合いつくわけないでしょ。
ホントにANAとJALが統合したらどうなる?
まず、旧JALの副操縦士は旧ANAのキャプテンと飛ぶことはできないというルールができる気がします(逆も然り)。実際、ANAとANKが統合したとき、旧ANKの機長とANA本体の副操縦士は一緒に飛べませんでした。
また、旧ANAの審査官は旧JALのパイロットを審査できないというルールもできそうな気がします(逆も然り)。
だって考えてみてください。
旧ANAの審査官が旧JALのパイロットを不合格にするようなことがあったら大変ですよ!旧JALのメンツは丸潰れ。下手すりゃJALの機長組合が審査結果にイチャモンつけかねない!もはや裁判沙汰ですがなw
うん、もうこの時点で運航本部を統合するのはやはり明白に無理ゲーな気がしますね。
たとえ会社が統合しても、パイロットは今まで通り別れて運航するのではないでしょうか。少なくとも最初の数年は。
CABがそんなことを承認するのかどうかわかりませんが、無理に一緒に飛ばすよりは100倍安全だと思います。
古株の旧JALのキャプテンが、若い旧ANAの副操縦士にJALのプロシジャを無理強いしたり、旧ANAの機長がJALの副操縦士に「俺はJALのパイロットを認めてない」とか余計なこと言ったりすることが普通にあり得るわけで、操縦室内が健全な状態に保たれるとは、正直思えないワケであります。
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