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パイロットにとってのナイスランディングとは?!

2020年8月18日 >

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も、最近例の貨物アテンダントで忙しく地味に時差ボケしている安西さんです。

久々の投稿はマジメなお仕事のおはなし〜。

 

スムースな着陸は必ずしもナイスランディングではない

先日、ツイッターでLuke氏がこんな呟きしてました。

 

 

要約すると、スムースな着陸が必ずしもナイスランディングというワケではないというお話なんですが、先日コレを説明するのにちょうどいい例がありましたので、ちょっとご紹介したいと思います。

 

例① スムースな着陸

まず、スムースな着陸のデータをどうぞ。

 

 

接地した瞬間のIVV(降下率)を見ると-141ft/mになっており、十分にフレア(着陸のための機首上げ操作)がなされています。接地した瞬間のGは1.18Gでしたので、客席では大きな振動は無かったでしょう。

この着陸は、ナンの変哲もない空港でナンの変哲もないお天気の中行われました。こういう環境では、パイロットはフツーに着陸します。フツーに着陸すれば、まぁそれなりにスムースでお客様にとって快適な着陸になるわけです。

 

例② 敢えてドスンと接地させた着陸

次に、パイロットが敢えてドスンと着陸させたときのデータをご覧ください。

 

 

例①と同じように接地した瞬間のIVVを見てみると、降下率は-241ft/mを記録しています。つまり、①にくらべるとフレアは少なめになされており、パイロットがスムースな接地を意識した様子は伺えません。

実際、接地の瞬間のGは1.3Gを記録しています。客席ではドスンという振動があったはずです。寝ていたお客様は起きてしまったかも。

また、降下率の変化を見てみると、①よりの②のほうが速く地面に接近していることがわかります。つまり、パイロットはフレア開始のタイミングを遅らせているわけですね。

なぜ、パイロットはこんな操作をしたのでしょうか。理由は以下の2つです。

 

A. 滑走路が下り坂になっている

この着陸が行われた滑走路、実は結構な下り坂なんです。

 

 

よって、例①のように降下率を減らしてしまうと、いつまでたってもタイヤが地面に付かず、着陸距離が伸びてしまうんです。

 

B. 約14ktの背風が吹いている

データの中にあるCASとGSPDを比較するとわかるのですが、この着陸が行われた際、14ktsの背風が吹いていたんです。

14ktsというと、A320型機の背風制限に近い風です。このような風が吹いていると対地速度が大きくなるので、着陸距離が長くなってしまいます。

通常、このような場合は反対側の滑走路へ正体風を受けながら着陸を試みますが、この空港では地形の問題でソレができません。

AとBから、この着陸は着陸距離が伸びやすい状況下で行われたことがわかります。

着陸距離が伸びすぎてしまうと、最悪、滑走路の反対側に飛び出してしまうかもしれません。

したがって、パイロットはフレアの量とタイミングを調整し、タッチダウンゾーンの中にしっかり接地させることを優先させたワケです。この場合、スムースな接地はある程度犠牲になってしまいます。

 

パイロットの行動指針

 

パイロットは以下のような優先順序に基づき運航中の判断を下しています。

  1. 安全性
  2. 快適性
  3. 定時制
  4. 経済性

スムースな接地を目指すということは、お客様に快適性を提供することに他なりません。お金を払って搭乗されているお客様にはもちろん快適に過ごしていただきたいですから、可能な限りスムースな着陸は心掛けるべきです。

しかし、例②に於いてスムースな着陸を狙いすぎると、一番大切な安全性を脅かしてしまう可能性があります。こういう場合、快適性はある程度犠牲にして安全性を優先した着陸を行います。

 

まとめ

ということで、接地の際の衝撃だけでナイスランディングかどうかは判断できないということがおわかりいただけたような気がしてますが、いかがでしょうか。

スムースな着陸でも、コックピットではパイロットが「もうちょっとドスンと接地させるべきだった」と反省しているかもしれませんし、振動の大きい着陸だったとしてもコックピットではパイロットが「キマった...」と思っているかもしれません。

もちろん、スムースな着陸を狙ったのにガシャーーンとやっちゃうこともあるにはあります。今でこそこんな風に語ってますが、僕も日本にいた時はしょっちゅうやらかしてました...

 

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